ローコストのアイデア
ローコストでかっこいい家を作るポイント
ローコストの住まいのアイデアやプラン提案の方法など、1年間書かせていただきました。
今回はこれまで書いてきたことをまとめていきたいと思います。ローコストのアイデアと言っても、人それぞれで、合う・合わないがあります。コラムを読んでできそうなものを検討し、工事金額をなんとか予算内に収めてもらえたら幸いです。
このご時世ですので住まいづくりの予算について頭を抱えている方も多いと思います。コロナが引き金となったウッドショックに始まり、材料の高騰、戦争による材料不足、輸送費の高騰、さまざまな要因があり、今まで通りにはいかない建築業界になりました。
もちろん私の事務所も例外ではなく、見積価格が1割〜2割増額しています。お施主様には大変ご迷惑をかけておりますが、面積を縮小したり、材料を変更したり、なんとか対応させてもらっている次第です。今まで以上にいい意味でのローコスト化が必要ですね。
建物を小さくする
ローコストとして最も重要なのが建物の大きさです。坪単価〇〇万円。よく目にする表示だと思いますが、どこまでを見積もりに含んでいるのか、会社により違いますのであまり当てにならない金額だと思います。ただ、坪数が増えれば工事費も増えるのは事実でこれをどれだけ減らせるかというのは重要なことです。
『通り土間の家』では外部の土間スペース、玄関、玄関ホールをLDKと兼用させてしまうことで面積をコンパクトに抑えつつ、広がりのある空間を提案しました。
『広いリビングの家』ではウォークインクローゼットの廊下、書斎、洗面所などをLDKの一部として貢献させることで広がりを確保しています。
『パノラマの家』も似たような考え方で各部屋に行く廊下をウォークインクローゼットとしてスペースの有効利用を図っています。スペースを兼用させる。これは重要なことです。他の家を参考にする方が多いですが、そこに住むのは自分達です、一度自分達の生活を見直しこの部屋は意外といらない、まとめてしまって大丈夫など検討してみるといいと思いますよ。
外をうまく活用する
続いては外を有効に活用する、です。外は手をつけなければ無料です。それをどれだけ活かすかにより費用も大きく変わります。
『アーケードハウス』では半透明の波板で壁と屋根を作ることを提案しました。最低限の仕様で、広がり、そして季節による使い勝手の多様性がある楽しい住まいを実現しています。
『縁側の家』でもリビングの外側に半透明の屋根と格子の引き戸のある縁側を設けコストを抑えつつ防犯性とリビングとの一体的利用ができるようにしました。敷地を読み周辺環境を取り込みながら無料の外とうまく結びつけて行けたら、広くそして安く、を実現できるのではないでしょうか。間違っても歩行者が気になりカーテンが開けられない、そんなリビングにならないように注意したいものです。
仕上げを工夫する
次は仕上げを工夫することです。床材ですと無垢のフローリングが頭に思い浮かぶ方が多いと思いますが、合板仕上げというのもざっくりしていて私は好きです。
1枚で大きな面を構成できるのでどっしりとしていてラフな仕様になります。工期も短縮しますのでフローリングの1/3、1/4程度で収まります。
『間仕切りと大収納の家』では合板を半分にカットし市松張りの一手間を加えてもらうことで高級旅館のような雰囲気を演出しています。床は面積もありますので、ここを抑えられるのは大きいです。壁や天井はセルフビルドで仕上げるというのもいいですね。
『アーケードハウス』はお施主様のご家族+インデコ事務所総出で漆喰を塗りました。素人の味、コテむらが残るかっこいい壁になります。楽しい、そして家族の思い出になる、おまけに調湿作用のある漆喰仕上げなのにコストが抑えられるという一石四鳥の仕上げ方です。上手い下手は別として素人の私でよければ塗り方だけは教えられますので興味のある方はレクチャーしますよ 笑
設備は最低限の仕様でコスパよく
続いての削減ポイントは設備の仕様です。便器やお風呂、キッチン等をショールームで選び、これもあれもとオプションをつけたばっかりに見積り額がとんでもないことになっていたという方も多いと思います。基本的に設備についてはどうしても必要なものを除き最低限の仕様でいいと思っています。理由としては簡単で数年経つと最先端の仕様も古くなるからです。とくに流行っているものはそれが終わると余計に古く感じてしまうので要注意ですね。
個人的には業務用のステンレス流しなんてオススメです。シンプルで仕様も最低限、流行りの波に乗ることなく存在し、なんと言っても最高のコストパフォーマンスを発揮します。シンクと作業台なら数万円で揃いますよ。この流行りについては家の仕上げにも同じようなことが言えるので注意してくださいね。ずっと住むわけですからその時のブームに乗ると終わった時の惨めさは計り知れません。ただ、本当にそのテイストが好きで建てた人はらしさがでていてカッコいいものです。
造作家具はシンプルなデザインに
誰がつくるのかというのも削減できるポイントです。これは工事をお願いした工務店や建設会社さんによりますが、私は造り付け家具は箱と棚板だけのシンプルな形状とし大工さんが造れるようにしています。家具屋さんの方が精度は高く細かい加工もできますが値段を比べると大きく変わってきます。それと同様、建具屋さんを必要とする扉関係も極力少なくしコスト削減を図ります。
照明器具や設備は自分で探す
削減ポイントも残すところわずかとなってきました。続いてのポイントは施主支給です。インターネットの普及によりお施主様自ら照明器具や洗面器などの水回りを購入できるようになりました。自分で購入することで余計な経費を減らすことができ、ネット上で金額を比べることもできます。自分の手間と責任が増える分安くなるというメリットがあります。便器を支給するという強者もいましたね。
こだわりの部分のみにお金をかける
そして最後のポイントです。こだわり部分にのみ予算をかける、です。たとえば塗り壁のカッコいい外観にしたいのであれば、そこにだけ予算をかけてあとは最低限で済ませます。オーダーの玄関ドアやサッシも外観と絡んできますのでそこには予算をかけます。水回りなどは先ほど書いた最低限、床は合板、壁と天井はセルフビルド、家の形にもよりますがこの仕様である程度はコストを抑えつつ理想の外観になると思います。
こだわりがキッチンにあればキッチンとそれに付随するダイニングテーブルなどに予算をかけてその他は最低限に。大きなダイニングテーブルと無料で手に入る外をうまく混ぜて行けばとても優雅なディナータイムを送れると思います。メリハリをつけることでそちらに目が行き、細かい部分は気にならなくなるため全体的に費用をかけているように感じますし、自分のこだわる部分いわば夢を叶えることもできます。
また時間が経てば、あふれ出てくると思いますが、私が現時点で提案させていただいた内容は以上です。それぞれお願いしている設計士にアイデアをだしてもらいながら、このあたりを施主様自身が意識して家づくりを進めていけば、予算を抑えつつも夢が壊れることなく素敵な住まいが実現できると思います。
家を建てている方はたくさんいますが、同じ考え、生活パターン、敷地、家族構成などみんな違います。もともと違うので誰かと同じに合わせる必要はありませんよ。自分を信じて楽しみながらゆっくり夢を叶えましょう!
毎月お読みくださったみなさま本当にありがとうございます。感謝しております。
イン-デ-コード design officeを主宰。1979年2月18日宇都宮市に生まれる。宇都宮日建工科専門学校卒業後、TAKES設計事務所に入社。2008年、独立し、現在に至る。業務内容は、1.住宅、店舗、事務所、インテリアなどの企画、設計・監理、2.リフォームの企画、設計・監理、3.家具のデザイン等。
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