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ローコストで「広いリビングの家」をつくる方法

  建築コラム

前回、前々回と設計提案、設計費等について書きましたので、今回はそれを踏まえつつ、最近完成した『広いリビングの家』について説明したいと思います。

予算内で「広いリビングの家」を作るためには?

この家は家族3人の住まいで、要望としては「広々したリビングがほしい」ということでした。これまでローコストの家を建てるためのアイデアをいくつか書いてきましたが、今回のポイントは「コンパクトな面積設定」になります。

必要な部屋をそれなりに設けて広々したリビングをつくると建物の面積は大きくなり費用もそれに伴い、増えていきます。もちろん予算には限界がありますので、建物面積は小さくしたいところです。

各個室を最小にするのがポイント

面積は小さく抑えたいけれど、リビングは広くしたい。なかなか難しいですね。そこで考えたのが各個室は最小の広さにして、リビングとして含められるものは含めてしまおうというアイデアです。玄関などもリビングの一部にしてしまったりする私ですが、ここではウォークインクローゼット・書斎・洗面所などをリビングの一部にしてみました。

リビングの一部を利用した洗面所は家具が置かれているようなラフな洗面台を選んでいます。

通路を空間として利用する

たとえば、ウォークインクローゼットには収納するためだけに使う通路があります。書斎には人が座るスペースがあります。洗面所にも歯を磨いたり、お風呂に行くためだけの通路があります。普段、使わないその通路を空間として利用すれば広がりを感じることができると考えました。

各個室は寝るためだけのスペースとして割り切り、ベッドを置くだけと考えれば4〜5帖もあれば十分です。各部屋へのアプローチはその通路を使えばとても合理的な計画となります。おかげさまで28坪(57帖)の住まいにもかかわらず30帖という広々したLDKをもつ平屋の家ができました。なんと家の半分以上がLDKです(笑)。

キッチンとウォークインクローゼットの通路を兼ねるので、無駄なスペースがありません。

段差で空間を分ける

とはいっても、ただ単に◯帖だから広いという考え方にあまり意味はなくて、同じ面積でも広く、反対に狭く感じるものあります。私は設計士ですからさらに広がりを感じられる工夫を散りばめています。

まず、通路スペースとリビングの間に長いカウンターと40cmの段差を設けました。これは同じ空間にいながらも気持ちに変化を生むように考えたためです。リビングの一部といっても所詮はウォークインクローゼットの通路ですので段差を上がった部分はプチプライベートスペースという意識になります。お客様が遊びにきたときも、ここは家族用のスペースかな?と認識してもらうのが狙いです。

プチプライベート感を味わえる書斎スペース。

動作の変化で広がりを感じる

たとえば、靴の脱ぎ履きやくぐるといった小さな動作でも気持ちに変化を与えることはできると思います。ただ広いというだけでなくそんな変化が生まれる場所はより広がりを感じますね。

段差の効果は他にもあり、リビング側からは1.4mの壁に見えるのでキッチンの手元や書斎が見えませんが、逆にキッチン側からはリビングを見渡すことができます。いる場所により視線の抜けや見え方が全く違うので広く感じます。このホールのような放射状に伸びる天井も広がりを感じられる一因です。

段差があることでリビングからはキッチンや机の手元は見えず、反対にキッチン側からは見渡せます。

変形地を活かす住まいの形を考える

リビングの天井の広がりは、台形という特殊な土地形状から導き出されたものです。この住まいが建つ土地は、北側道路に面しており、台形という変形した敷地です。西側は崖、南側は線路という土地で、開放的でこの先も建物が建たないです。

『北庭の家』でも書きましたが、北側道路は駐車場と庭との調整が難しく駐車場を確保すると庭が取れない、庭をとると駐車場が取れないということになります。そこで富士山のような台形の建物とし、その両方を満たしつつ、南側のもっとも開放的なところに向けて放射状に広がる建物を考えました。エイのような伸びやかな形になっているのは敷地形状と周辺環境から導き出されたものです。

変形地をうまく活用すると、プライベートな庭や駐車場も効果的に確保できます。外構はこれからのんびり進めていく予定です。

プライベートなリッチな庭

外観は開放的なところに伸びやかに広がり、内部ではその広がりを感じながらプライベートな庭と連続的に繋がるようになっています。外から見た人はこんなに広々としたプライベートな庭があるとは思いもしないでしょうね。わかる人にはわかるリッチな庭です。

そしてこの斜めという線、本当に伸びやかなのです。一見、使いづらそうですが三角形と四角形、一辺の長さが全然違います。当然ですが…。この長い一辺にリビングを配置してサッシをつけるとその広がりはさらに変わります。一辺が長い分、幅の広いサッシを設置できます。今回は天井も高いので、幅だけでなく合計2.6mの背の高いサッシを入れることができました。

敷地いっぱいに建物を建てることでプライベートな庭ができました。

視線の広がりが小さな工夫を盛り込む

『広いリビングの家』はただ単に面積が広いだけではない工夫が盛りだくさんです。ただの通路はリビングの一部にし、段差を設けることで気持ちと視線に変化を生みます。台形という伸びやかな形状、それに沿った幅と高さの広いサッシ、それと連続するプライベートな庭。さらに放射状に広がる天井。各部屋の面積は最小にすることを忘れずに。

さらに照明計画にも広がりの工夫を施しています。もっとも長いキッチン背面と、もっとも高いテレビ台側面には間接照明を入れ、長さや高さを強調しています。この長いカウンターもそうですが長いとか高い、大きいということを強調するとそちらに視線が動くので自然と広がりを感じます。

高さや長さを強調するデザイン空間。視界が抜けて、実際よりも広がりを感じます。

本当に必要な空間を考える

これから住まいを考えている方はもちろんですが、面積について部屋は◯帖ほしい、ということだけでなく、その前に一度使い勝手を考えてみるといいかもしれません。寝室は寝るだけだからベッドを置くだけ。そう考えるとそんなに広い部屋はいらないはずです。ウォークインクローゼットなどの収納も同様で、あればあるだけ物は入りますが、家の面積には限界がありますので、本当に自分が必要な量を見極めておくのは重要だと思います。眠っている洋服や小物など意外とあるかもしれませんよ(処分したらそんなに収納は必要ないかもしれません)。

使い勝手と収納量の見直し、そしていい意味で割り切ってしまう。このお施主様もそうですが、それを上手に割り切ることができたらローコストでも広々したリビングを手に入れることができるかもしれません。今頃、美味しいコーヒーに外の緑をみながらロッキングチェアに揺られ、ボーっと寛いでいることでしょう。

長いライン、高いラインに間接照明を配置することで広がりを感じます。

荒井 慎司

イン-デ-コード design officeを主宰。1979年2月18日宇都宮市に生まれる。宇都宮日建工科専門学校卒業後、TAKES設計事務所に入社。2008年、独立し、現在に至る。業務内容は、1.住宅、店舗、事務所、インテリアなどの企画、設計・監理、2.リフォームの企画、設計・監理、3.家具のデザイン等。
https://in-de-code.net  info@in-de-code.net

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