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超ローコストで広い家をつくる

  建築コラム

「アーケードハウス」というアイデア

今回紹介するのは『アーケードハウス』という建物についてです。広い住まいと個別に使える趣味室がほしい。それを「超ローコストで」というオーダーです(笑)。

私の事務所では当たり前になりましたローコスト住宅ですが、もちろんローコストではない一般住宅も設計します。それぞれの家庭で広いリビングだったり、平屋だったり、ウッドデッキだったり理想とするイメージがあると思いますが、「ローコスト」というのも数ある要望の中の一つだと考えていますので「広い家を超ローコストで!」という無理難題もありえますね! 

ただ、普通に建てれば普通にお金がかかりますので、それを実現するためのアイデアと提案を受け入れる包容力が施主様にも必要になります。(費用は消費税を入れても建築当時、1600万円くらいでおさまるようにしました!壁と天井は私たちと施主様家族と全員で漆喰を塗りました。ただ、現在はウッドショックと材料の高騰により、今では不可能な金額です……)

玄関を入ると山砂を敷いた中庭のお出迎えです。

室内のように使える場所をつくる

今回提案したのは、できるだけ手をつけない場所をつくりつつ室内のような空間をつくるというアイデアです。手をつけないということはお金がかかりません。そしてその場所を室内のように使えれば、ローコストでありつつも広い家を手に入れることができます。具体的には庭にプライバシーを守る塀(壁)と屋根だけを作るイメージで人の視線と雨風をしのぎます。

両側に建物があり、その間を半透明の屋根と壁でつないでいます。

考え方ですが、まずオーソドックスな四角の家をつくります。それを2分割し、それぞれのブロックを敷地いっぱいまで離して設置すると、真ん中があきますよね。その空間に、塀(壁)と屋根をつければ室内のように使える中庭のできあがりです。

建物を半分にし、真ん中を空けると中庭ができます。

夏の暑さ、冬の寒さも工夫しだい

中庭は、あまり手をつけることなく、室内に近い環境を手に入れることができます。屋根と壁は半透明の波板としてコストを抑えつつも大量の光を取り込めるようにしました。そうなると夏場の暑さが気になるため、一部を開閉できる窓にして室内に風を取り込めるようにしています。

床は地面の上に砂を入れて完成です。ただ、注意したいのはあまり手をつけないということは、外に近い環境になります。夏は暑いし、冬は寒いのをお忘れなく。断熱材を入れたり、ウッドデッキにすることもできるのですが、手をつければつけるだけコストがかかってきますので、そのへんは予算に応じて検討する必要があります。

ここを開けると冷たい風が入り込み中の熱気を外に運んでくれます。

住まいの余白がワクワクを生む場所に

余談ですが、引き渡し後に見に行ってみるとこの場所にソファが置いてありました(笑)。そして砂で仕上げた床はもちろんお子様の遊び場になっていて、貸切の公園状態でしたね。冬はだるまストーブを置き、毛布にくるまって過ごしているとのこと。

この使い方は正直想定外でしたのでとても驚いたのと同時にワクワクした記憶があります。設計した住まいが自分の思いを飛び越え、いい意味で裏切られるというのはいいものです。逆に言うと、そういう可能性というか余白があることが楽しく住み続けられる家なのだと思います。

外でもない、室内でもない。この曖昧な空間がワクワクします!

四季を感じながら工夫して暮らす

四季に逆らうことなく、暑い寒いを感じながら、どうしたら暖かくなるか、どうしたら日陰を作り涼しくなるかあれこれ考え、家とともに家族も成長する住まいは理想です。省エネ性能が騒がれているご時世ですが、家の設計を仕事にしている以上、エアコンなどの設備性能や、屋根のパネルで解決、そんなすべてが設備頼りの設計は避けたいところです。四季の良さを伝え、共感してもらえる人が一人でも増えれば結果として省エネにつながっていくような気がします。

玄関はグレーの箱をずらすことで、雨に濡れない軒下空間を確保しました。

先ほどのお施主様。夏は開閉式の網戸と天井からタープを吊るして直射日光を遮ることも考えているようですのでまた遊びに行くのが楽しみになりました。巨大な業務用扇風機の提案もさせてもらいましたよ。

用途を兼ねるところ、明確に分けるところ

あまり手をつけない室内のような場所ですが、庭はもちろん、玄関ホール・個別に使える趣味室の廊下・階段ホール・リビング等を兼ねています。用途を兼ねることで面積を最小限に抑えつつ、コストパフォーマンスの向上と広がりを感じられるようにしています。

手をつけていない場所ですが、これを挟むことで季節によりリビングの延長として使えたり、時には閉めて暖房効率を高めたりできます。個別で作った趣味室も独立性が増し、家族用のスペースと明確に分けることができました。離れに行く感覚ですね。

2階へはこの中庭を通りアクセスします。吊り橋のような感じです。

外のような使い方を楽しむ

手をつけるところは最小限に、半分外のような場所を挿入し、広がりをもたせた住まいです。プライバシーが守られていますので、周りを気にせずBBQをやったり、お子様とファミリープールで涼むというのもいいですね。四季を感じながら住み手と一緒に成長していく姿に乞うご期待です!

夜の中庭。半透明の波板を通して車のライトが見えます。プライバシーは守れますね。

荒井 慎司

イン-デ-コード design officeを主宰。1979年2月18日宇都宮市に生まれる。宇都宮日建工科専門学校卒業後、TAKES設計事務所に入社。2008年、独立し、現在に至る。業務内容は、1.住宅、店舗、事務所、インテリアなどの企画、設計・監理、2.リフォームの企画、設計・監理、3.家具のデザイン等。
https://in-de-code.net  info@in-de-code.net

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