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プライバシーを守りながら光を取り込む住まい

  建築コラム

北側道路は難しい?

今回は東・南・西に隣地が迫り北側道路からアプローチする住宅密集地に建つ夫婦2人の住まいを書いていきたいと思います。土地の広さは48坪です。要望としては、住宅密集地にいながらも周りの目を気にすることなくのんびりでき、プライバシーを守る住まいです。

北側アプローチという土地はよくありますよね。そして意外と購入を悩んでいる方も多いと思います。土地にある程度の広さがあればいいのですが、そうでない場合は思いのほか計画が難しい部分があります。まず、最初の問題は駐車場と庭との関係です。

駐車場を確保したい。でも庭はどうする?

北側道路の場合、駐車場は道路から6〜7mを確保しようとすると建物が南側に寄ってしまい庭のスペースが取れません。また南側に建物があると、採光もほとんど期待できないということもありえます。庭を充実させ、南側からの採光を取り込もうとすると今度は北側の駐車場が狭くなります。縦列駐車や道路と平行に駐車しなければならないということもあります。駐車場と庭、この両方を確保しようとするとどちらも中途半端で使いづらい結果になりかねないのです。

栃木県に住んでいると車を毎日使う方は多いと思います。ですので駐車しにくいというのは非常にストレスがかかりますね。この家は車を停めることがストレスにならないよう、ある程度ゆとりのある駐車場を確保しましたので、南側の庭を諦めることにしました。

ただ、「南側の庭は取れませんでした。採光も期待できません。土地が悪いから仕方ないですね」と言ってしまうのはあまりにも酷ですよね。というか、私の場合、逆に「どうにかしたい」と燃えてくるんです(笑)。

北側にプライバシーを守る庭

ちょっと特殊な方法ですが、採光とプライバシーを確保できるアイデアを提案しました。その方法は、斜めの壁で囲った庭を北側に配置するというもの。斜めに覆われた壁は周辺からの視界を遮り、プライバシーを守ります。そして、この斜めの壁が太陽の光を受ける反射材の役割をします。南側からの直射日光には期待できませんが、南側から降り注ぐ光をキャッチし、室内に導くことはできるのではないかと考えました。

北側道路の敷地に建つ北庭の家。
北庭の上部の開口から光を取り込む。壁は反射材になる。

北側から入る光は均一で落ち着いている

「北側から入る光なんて(暗い)」と思う方もいると思いますが、光の質が違います。南側からの直射日光はとても元気で、時間や季節、天候により変化します。が、北側からの光は周りに左右されず、均一な光を室内に届けてくれます。

元気で活発な光と、しっとりした均一な光。北側の光は、美術館の光に近いかもしれません。小さなお子様がいて家中ドタドタ走り回る元気な住まいであれば、陽の光がサンサンと降り注ぐまぶしいぐらいの明るい家がいいでしょう。ただ夫婦がのんびり過ごす落ち着いた住まいであれば、北側の光をしっとりと取り込むのもアリだと思います。

ガラス張りの室内でも落ち着いた雰囲気に

動画を見ていただくとわかるのですが、この家は、直射日光は入りませんが、斜め壁に当たる光が時間や季節により変化し、日差しを感じることができます。玄関と2階のリビングは吹き抜けを介し、ワンルームでつながります。リビングはスキップフロア形式とし、高さの違う床をいくつか設けました。

北庭に面する部分は全面ガラス張りですので、この場所の光を眺めながらお茶を飲むのが好き、この時間の躍動感のある光が好き、など刻々と移りゆく光(時間)をゆっくり楽しんでもらい、なにげなく過ぎてゆく日常に光の彩りを加えたいと考えました。

均一な光で満たされたリビングは、やさしい日差しで落ち着く雰囲気に。

北側の庭は光を取り込む、プライバシーを守る、その他にも玄関ポーチ、玄関ホール、リビングの+αの広がりとして機能します。「庭は南側」と決めつけることなく、考え直してみると違う道がひらけるかもしれません。

使いやすい動線とは何かを考える

その他、この住まいは動線にも特徴があります。夫婦の二人暮らしということもあり、二人の「使いやすい動線」に特化しています。とても使いやすいと思いますので紹介しますね。

誰が使うかを明確にし、家事動線を第一に考えた<洗面所+WIC+脱衣所>の空間。

まず、玄関ホールから〈洗面所・ウォークインクローゼット・脱衣場>のワンルーム空間にアクセスします。そこを通り、寝室に行く流れです。「この場所は誰が使うのか?」ということをしっかり検討した結果、この動線になりました。

遊びに来たお客さまはトイレには行きます。しかし脱衣所やウォークインクローゼットには行きません。夫婦だけが使う場所であればそれらの部屋を一体的に設けることで、衣類を脱ぐ→洗濯する→干す→たたむ→しまう、この行為が同じ空間内で可能になります。

寝室へアプローチする動線上にそれらがあるのもポイントです。どこか離れた場所に行くのではなく、生活する流れに必要な空間を配置すると無駄な動きを省くことができます。

最近では玄関に家族用のシューズクロークや、洗面所と脱衣室を分ける事例も増えてきていますが、お客さまは洗面所までは行きますが、脱衣室までは行かないという動きを考えたものです。これにより生活感がないように見えるスッキリした住まい、片付けが今より楽になる住まいを実現することができますね。

家事動線がよい家は暮らしやすい

家事というのは生活する上では必要なことです。そして、毎日それに追われます。その動線をしっかり考えてあげることが時間短縮、疲労軽減につながり、結果、光をのんびり楽しみゆったりできる家になるのだと思います。美しさや綺麗さは重要ですが、生活があった上で成り立っているということを忘れてはいけませんね。


荒井 慎司

イン-デ-コード design officeを主宰。1979年2月18日宇都宮市に生まれる。宇都宮日建工科専門学校卒業後、TAKES設計事務所に入社。2008年、独立し、現在に至る。業務内容は、1.住宅、店舗、事務所、インテリアなどの企画、設計・監理、2.リフォームの企画、設計・監理、3.家具のデザイン等。
https://in-de-code.net  info@in-de-code.net

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