映画のワンシーンのような家。
この家は映画好きのHさんが一つ一つの空間を突き詰めて考えぬいた住まいです。「入居して1年ですが、まだ全然できていないんです」というHさん。静かな口調でていねいに説明をしてくれるその様子に、住まいへの深い愛情と情熱を感じました。
住宅街の高台に建つカリフォルニアスタイルの外観が目を引くお住まい。白い擁壁と白いカバードポーチがさわやかな印象です。お出迎えしてくれたのは笑顔のHさん夫妻。あたたかな昼下がり、芝生の庭でお子さんと遊ばれていたようです。
開放的な外観から一転、玄関ドアを開けると、そこはまた異空間。カジュアルでありながら、凛とした、清楚な玄関ホールが広がります。高い天井の明るい吹き抜け、リビングに通じる大きな開口、水まわりへの廊下、どこを見ても、まるで映画のワンシーンのように目に映ります。
90年代、2000年代のアメリカ映画に影響を受けた空間づくり。
違和感のあるものは入れない
「統一感を大切にしています。ちょっとでも違うなと思ったものは選ばずに、デザイン重視でとことん探します」というHさん。物選びは、デザインはもちろんのこと、色、質感、大きさなどを吟味して決めているそうです。そのため「間接照明も壁の飾りも、もう少し入れたいと思っているのですが、探すのに時間がかかっています」。
話を聞いて驚くのはその世界観の明確なイメージ。揺らぐことのないボーダーラインがあるのです。「本は参考にしていないんです。90年代、2000年代のアメリカの映画に影響されて、イメージが自分の中でできあがった感じです」といいます。
家づくりを依頼したのは、オーダーメイドのキッチンなどを得意としている建築会社で、こまかい要望にこたえてくれるところが決め手になりました。
色選びは慎重に、大胆に
Hさんの住まいの各部屋を見て感動するのはその色のバランス。1階はペンキの重ね塗装仕上げ、2時階はクロス張りになっていますが、その選定は慎重でいて大胆。建築会社のインテリアコーディネーターにお話を聞くと、「無難な色は選ばないので本当に楽しかったし、うれしかったです」とのこと。たしかに1階のフロアは白い腰壁にオリーブグリーン。このグリーンも何十色もの中から選ばれたそうで、白やネイビーとの相性も抜群です。
照明は明るすぎないように
「1階は明るすぎないようにしました。シーリングライトは入れていません」とHさん。照明はアメリカ製で取り寄せに数ヶ月かかったそうです。シンプルなようで、なかなか日本では手に入らないデザイン。照明は家づくりの大きなポイントなのだと感じさせられました。
見せるものは限定。生活感は出さないように。
考え抜かれた生活動線
一見、デザイン重視のようですが、Hさんの家は動線がとてもよく、便利な間取りになっています。「共働きなので生活動線は何度も打ち合わせを重ねました」と奥様。キッチンの後ろと横に存在感のあるバーンドアがありますが、背面のドアはランドリールーム、横のドアはパントリーにつながっています。さらにパントリーはそのまま通り抜けられ、玄関までストレートな動線です。パントリーは広く、両側ともにたっぷりと収納できる棚が設けられ、冷蔵庫から食品のストックまですべて収納できます。
ランドリールームの横には大きめのクローゼットがありますが、「1階にまとめたいとお話ししました。家族4人分すべてを収めたいと。物は増やさないように、ここに収まるだけにしたいと思っています」と奥様。
そうしたことにより、子どもの衣類も夫婦の衣類も、同じ場所に保管。季節ごとの入れ替えもしないで済むようになりました。洗濯物は室内干しと決めていたので、ベランダは設けず、ランドリールームで乾燥した衣類はそのまま隣のファミリークロークに収納できるそうです。